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「僕も配属前に隊長に助けられた事があってね、恩返しじゃないけど、力になりたかったんだ」
「フェレさんも、同じように追い出されようとしてたんですか?」
「フェレでいいいよ。僕のときはまぁ、移民を追い出すところへ連れて行かれて、石まで投げられたなぁ」
「うわぁ」
「恩義とか言うと隊長はもっと頑なになるからね、僕は副隊長に間に入って貰ってなんとか居座ってるんだけど」
「副隊長?」
「隊長があんなんなんでさ、城に行ってありがたーい命令もらってくんのは副隊長の仕事なんだわ。眠そーな優しそーな顔できっつい人だから要注意だ」
 会ってみたいような会わない方が良いような忠告に、ラウルは引き攣った笑みを浮かべた。
「真面目にしていれば大丈夫だよ」
「あー、はい、そうします」
 頼りない返事に、フェレはラウルの肩を軽く叩いた。慰めというよりは、一緒に頑張ろうという励ましなのだろう。
「……っていうか、先輩達は僕の入隊に反対じゃないんですか?」
「いんや、別に」
「僕は歓迎してますよ」
「好きにしたらいい」
 最後に短く、ボリスがどうでもいいことのように答えた。それを補足するように、カルロスがどこか寂しげな顔で呟く。
「隊長ね、あの人、不器用なんだわ」
「?」
「こんな仕事やりたくないのに、自分が引き受けなきゃもっと酷いことになるって、そんで矢面に立ってるわけ。俺らは単に、あの人が心配なだけだよ。だから同じ心で戦ってくれる同志なら大歓迎」
「君も僕と同じで、隊長に恩があるようだしね」
「居るなら止めはしない。だが無理をするな、そして無理だと思ったら素直にそのまま去って欲しい」
 ボリスの言葉が、皆の思いのまとめなのだろう。
 もとより引き返す気などなく、ラウルは笑顔で頷いた。正直なところ、実際に所属するまでアルベルト以外の事は全く知らなかったのだが、今のところ他のメンバーの感触も悪くない。あからさまに性格の歪んだ人物はいないようだが、どことなく出世街道へは進めないような一風変わったお人好しの集団という印象だ。
 これならなんとかやって行けそうかと、ラウルはふ、と安堵の息を吐いた。 。


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